第6回 基礎物理セミナー合宿
-量子現象:情報と統計に関する若手ワークショップ-
概要
若手研究者を中心にした2泊3日の合宿形式でのセミナーです。 幅広い専門と興味の参加者が集まり議論をすることで、基礎物理の理解を深めながら、 新しい物理の発見につなげていくことを目的とします。基礎物理に根ざした入門的セミナーを講演で行い、それぞれの専門的な研究成果の発表をポスター発表で行います。
ご質問等は布能謙 (funoあっとcat.phys.s.u-tokyo.ac.jp) まで
お知らせ 第6回基礎物理セミナー合宿
会場:
箱根太陽山荘
開催期間: 2013年12月7日(土)〜9日(月)
参加費&宿泊費: 16500円 (内訳:初日9000円、二日目7500円)
参加申し込み: 申し込みの受付は終了いたしました。
招待講演者 : 藤井啓祐、稲葉謙介、中村秀司、西田祐介、水島健、田島裕康
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プログラム
講演アブストラクト
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西田 祐介 (東工大)
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原子核、冷却原子、物性物理をつなぐ普遍性とエフィモフ効果
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系の微視的詳細に関わらず同じ物理現象が現れるとき、その現象を普遍的であるという。その顕著な例のひとつは、離散的なスケール対称性を持つ無限個の3体束縛状態が現れることを予言する、エフィモフ効果である。エフィモフ効果はその特異性と普遍性から、これまで原子核物理や原子物理など分野の垣根を越えて精力的に研究されきており、特に近年の冷却原子を用いた実験技術の発展により、実験的に観測することも可能になってきている。本講演では、エフィモフ効果について解説したあと、物性系においてもエフィモフ効果は現れうることや、スーパーエフィモフ効果と呼ばれる新奇の普遍的現象の発見など、最近の研究成果を紹介する。
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稲葉 謙介 (NTT)
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光格子中の冷却原子を用いた量子シミュレーション
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光格子中の冷却原子気体は、固体中の相関電子系などにみられる量子多体問題をシミュレーションできる系として期待されている。固体における多体問題は、格子振動や欠陥、不純物、電子の軌道自由度など、様々な要因が絡まった複雑な理論模型に帰着する。一方、光格子においては、そのような複雑性はほとんどない(あるいは制御可能である)ため、実験と直接的に比較すること可能な、単純な理論模型が得られる。講演では、光格子中のボース気体が示す、超流動・モット絶縁体相転移に関する我々の解析を紹介する。特に、分光実験に注目し、この実験を理論的に取り扱う方法や、実験で得られるスペクトルに含まれる物理的意味を述べる。これをもとに、光格子系の量子多体問題における、理論と実験のつながりを議論する。
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水島 健 (岡山大)
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超流動・超伝導の対称性とトポロジー
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トポロジカル超流動・超伝導体とは、バルクの性質は一見すると通常のBCSと変わらないが、その表面や界面にマヨラナ粒子と呼ばれるエキゾチックな準粒子を伴う物質である。本講演では、時間反転対称性、結晶対称性、秩序変数の内部対称性等がどのようにしてトポロジカル超伝導性やマヨラナ粒子を「守り」、さらに、そこに現れる物理現象を豊かにするのか、ということを紹介する。
講演では、異方的超流動・超伝導の教科書的物質である3HeやUPt3等の超伝導体を具体例として、内部対称性や結晶対称性とトポロジカル超伝導性との関連性を明らかにしていく。いずれの物質も有限磁場においてトポロジカル量子相転移が起こる。この臨界磁場近傍で期待されるトポロジー起因の量子現象についても紹介する。さらに,これらの物質に現れるマヨラナ粒子の非可換統計性やイジングスピン等の性質についても触れる。
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中村 秀司 (産総研)
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メゾスコピック系における電流ゆらぎとその周辺
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電流の時間的なゆらぎを定量的に評価することで、時間平均された電流だけでは
わからない系の情報を得ることができる。これは電流雑音測定と呼ばれ、近年、
メゾスコピック系などで盛んに用いられている。
本発表では、電流雑音、メゾスコピック系について簡単な解説をし、その後電流雑音
測定を用いて量子コヒーレントな系におけるゆらぎの定理を検証した結果について報告する。
時間があれば、最近取り組んでいる単電子ポンプと今後の展望に関してもお話しする。
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藤井 啓祐 (京大)
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ダイナミクスにおける量子と古典の境界
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多体量子系を古典計算機でシミュレートすることは一般に難しく、
制御可能な別の量子系を用いてシミュレートする、量子シミュレーションが注目されている。
本研究では、デコヒーレンス下にある量子ダイナミクスが、古典計算機でシミュレートできるか否かという観点で、
量子と古典の境界を線引きするこを目指す。簡単な模型に対して、量子計算における手法を応用し、
古典シミュレーションが可能(困難)になる条件を導出する。
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田島 裕康 (東大)
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エンタングルメントと量子相関
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量子相関の大きさを表す、とされている量は非常に多くの種類と、クラスがある。
これらの量は、操作的な意味づけのしやすさ、古典相関との区別のしやすさ、計算しやすさなど、重要視する部分が様々に異なり、それぞれの長所と短所がある。
こうした指標の長所と短所を、エンタングルメントと呼ばれるクラスに属するものを中心に概観する。
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ポスター発表
1 | 蘆田 祐人(東大) | 自己駆動粒子の集団運動(特別実験@佐野研) (abstract) |
2 | 遠藤 晋平(東大) | Screening of the interaction between fermionic polarons (abstract) |
3 | 中郷 孝祐(東大) | Parallelized adiabatic gate teleportation (abstract) |
4 | 加藤 晃太郎(東大) | 非可換エニオン系におけるエンタングルメント・エントロピー (abstract) |
5 | 古川 俊輔(東大) | 人工磁場中の二成分ボース気体における量子ホール状態 (abstract) |
6 | 布能 謙(東大) | 量子フィードバック制御下でのゆらぎの定理 (abstract) |
7 | 増山 雄太(東大) | Observation of nonlinear phenomena in discrete AC Stark shift of superconducting qubit ( |
8 | 森 貴司(東大) | Nontrivial prethermalization (abstract) |
9 | 神中 俊明(東理大) | Poisson KernelのSmall Parameter Expansion (abstract) |
10 | 高橋 雅裕(学習院大) | 2-バンド超伝導体の FFLO 状態 --現れる悪魔の階段-- (abstract) |
11 | 倉持 結(東大) | 量子測定における相対エントロピーを用いた情報-反作用間トレードオフ関係 (abstract) |
12 | 佐藤 正寛(青学) | 量子磁性体におけるレーザー誘起フロケ状態と非平衡磁化過程 (abstract) |
13 | 東川 翔(東大) | グラフェンのエッジ状態とエッジ状態間相互作用 (abstract) |
14 | 上西 慧理子(東大) | prethermalization in a coherently split one-dimensional Bose gas (abstract) |
15 | 村下 湧音(東大) | Lebesgue分解より導かれる非平衡等式 (abstract) |
16 | 作道 直幸(理研) | 孤立量子系におけるエントロピー増大則 (abstract) |
17 | 白井 達彦(東大) | 駆動共振器系における量子力学的 干渉効果を起源とした相転移現象 (abstract) |
18 | 吉田 周平(東大) | 2成分Fermi気体で普遍的に成り立つTanの関係式とそのp波系への拡張 (abstract) |
19 | 渡部 昌平(東大) | 人工ゲージ場を伴う非立方格子型光学格子中のスピノールBEC (abstract) |
20 | 設楽 智洋(東大) | 適応的測定による測定の最適化 (abstract) |
第6回世話人: 布能謙(東大上田研究室)、白井達彦(東大宮下研究室)
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講演の様子
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ポスターセッション
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集合写真
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